2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧
◦永き日や遺産のもつれ聞く電話 (ながきひやいさんのもつれきくでんわ)
◦霾に掛布とられし松の上 (つちふるにかけふとられしまつのうえ)
◦食材を少し減らして四旬節 (しょくざいをすこしへらしてしじゅんせつ)
◦囀の鎮もりながら森暮るる (さえずりのしずもりながらもりくるる)
◦灰汁ぬきの孫のレシピの土筆食ぶ (あくぬきのまごのレシピのつくしたぶ)
◦雲の幕上がれば裾は春の雪 (くものまくあがればすそははるのゆき)
◦魂の中有にありて春嵐 (たましいのちゅううにありてはるあらし)
◦喜びにいざない起こす百千鳥 (よろこびにいざないおこすももちどり)
◦就活にさくら咲いたよ十余年 (しゅうかつにさくらさいたよじゅうよねん)
◦少年の自転車まがる春の川 (しょうねんのじてんしゃまがるはるのかわ)
◦日迎えや犬も草摘む鼻の先 (ひむかえやいぬもくさつむはなのさき)
◦捨てられし菜から菜の花けふ一日 (すてられしなからなのはなきょうひとひ)
◦暖かな雨は団地を溶かしゆく (あたたかなあめはだんちをとかしゆく)
◦帰りなんいざ故郷の家朧 (かえりなんいざふるさとのいえおぼろ)
◦退院の農夫まず手に春の土 (たいいんののうふまずてにはるのつち)
◦料峭やミサイル飛ばす予告あり (りょうしょうやミサイルとばすよこくあり)
◦春禽の思案に並ぶ小糠雨 (しゅんきんのしあんにならぶこぬかあめ)
◦春雷や閃光にある啓示かな (しゅんらいやせんこうにあるけいじかな)
◦北窓を開けば牛の目と合ひぬ (きたまどをひらけばうしのめとあいぬ)
◦朝東風に搾乳の音流れ行く (あさごちにさくにゅうのおとながれゆく)
◦春潮やヨナともなりて震災忌 (しゅんちょうやヨナともなりてしんさいき)
◦一人居を春風邪もって見舞われり (ひとりいをはかるかぜもってみまわれり)
◦春寒や孤独死を知る雨ひと日 (はるさむやこどくしをしるあめひとひ)
◦春陰や鳥を騙して虫は行く (しゅんいんやとりをだましてむしはいく)
◦この道の誤りてなき山椿 (このみちのあやまりてなきやまつばき)
◦春愁や雨の三日となりにけり (しゅんしゅうやあめのみっかとなりにけり)
◦啓蟄や慈雨になりても憂きことも (けいちつやじうになりてもうきことも)
◦外に子の声明るしや春しぐれ (そとにこのこえあかるしやはるしぐれ)
◦わが門は雛の使の用もなき (わがかどはひなのつかいのようもなき)
◦足あとの砂にすえたり二日灸 (あしあとのすなにすえたりふつかきゅう)