寒の月

            ○寒の月恋猫帰る道照らす

             (かんのつきこいねこかえるみちてらす)

          

           ○バラックに寝る子を偲ぶ寒の月    河童三子

           ○寒の月炊き出しの火に人盛り     々

           ○沖を行く客船の灯や寒の月      々

 

寒の水

            〇今朝淹れし珈琲の湯や寒の水

             (けさいれしコーヒーの湯やかんのみず)

         

            〇珈琲に期間限定寒の水     河童三子  

            〇生水のコップ一杯寒の水    々

            〇乳房なき骨身に刺さる寒の水  々

凍瀧

           〇万有の引力に耐へ瀧凍つる

              (ばんゆうのいんりょくにたえたきいつる)

           

            〇凍瀧や膨らんでいく宇宙かな   河童三子

            〇凍滝のただ静謐に刻きざむ    々

            〇凍瀧に抗らふ力漲りて      々

 

石蓴

          〇今朝の香に荒磯浦の石蓴汁

              (けさのかにあらいそうらのあおさじる)

           

           〇朝餉の香豆腐刻んで石蓴汁     河童三子

           〇遅れ掻く石蓴に砂を咬ますかな   々    

           〇ゆっくりと潮くる兆し石蓴摘み   々

 

          〇ぼた餅もて王子狐に詫び申す

             (ぼたもちもておうじぎつねにわびもうす)

        

           〇王子の狐騙されし身を嘆くかな   河童三子

           〇十字狐胸のクロスで神となる    々

           〇靴咥へ夜の狐が暗躍す       々

 

初天神

           〇初天神飛梅の木に人の柵

             (はつてんじんとびうめのきにひとのさく)

          

           〇成就あり不成就もあり初天神     河童三子

           〇舞妓らも歌舞練場より初天神     々

           〇願ひごと忘れ鈴ふる初天神      々

 

 

            〇雪雲の降りて幕間の大道具

              (ゆきぐものおりてまくまのおおどうぐ)

             

            〇へらへらと庭ふる雪も野に激し   河童三子

            〇風止みてほわりほわりと夜の雪   々

            〇夜もすがらかたかた囃す雪起こし  々